
「太布:たふ」ってご存知ですか?
紙漉きの技術が日本に伝わる以前、楮や梶の皮から繊維を取り出し、
細く裂いて績んで糸にして織った布のことです。
楮の内側の皮を裂いて糸にしたもの。
ここに至るまでの行程は気が遠くなるほど…

そしてその糸で織った太布です。

はりきって写真を撮ったのにほんの一部しか写っていませんでした。
でもこの布は青土さんのところへ行くことを知っているので
次回見せていただいて写真に撮ろうっと!
太布でつくられた角袋もありました。

紙漉きの技法が伝わると、全国各地で紙が生産されるようになります。
そんな紙をそのまま使って作られたのが「紙子:かみこ」です。
丈夫な和紙を揉んで柔らかくして貼り合わせて仕立てます。
柿渋やコンニャク糊を塗って補強します。
紙子の道中着です。柿渋で染めてありますね。

よく揉んだ跡がみえます。

紙を細く裂いて巻いたもの。

それを撚って糸にしたもの。

大福帳などの使用済みのものを再利用したことが多かったので、
墨の跡が見えます。

このように、一度紙に漉いてそれを糸にして織った布が「紙布:しふ」です。
同じ道中着でもこちらは「紙布」です。

経糸も緯糸も紙を裂いて撚った糸で織った布もありますが、
強度の関係で経糸は木綿や麻を使うことが多く、
緯糸に紙の糸を使うことが多かったようです。


こちらは未使用の着物です。ぱりっとしていますね(経:木綿・緯:紙)

庄内帯(経:木綿・緯:紙)この色使いがいいですね。

裂き織りの仕事着。裂いただけで撚っていないということでしょうか(未確認)

同じように見えてもこちらは「おおつづれ」と呼ばれるもの。

経糸は藤、反古紙を糸にして藤の糸に巻つてたものを緯糸にして織られた布。
主に作業着で、柔らかさと暖かさを出すために工夫されたものと思われます。
新潟あたりでよく見かけるそうです。

その撚った紙の糸(紙縒り)で編んだ「汗はじき」

汗をはじくと聞くと、夏の暑い時に着用するのかと思ったのですが、
東北地方から出ることが多く、逆に冬の寒い時に力仕事で汗をかくと
身体を冷やすので汗を取るのが目的のようです。
少しデザインを変えると今でも着られそう。

こういうのを見ると「結び」をやってみたくなります。


袋ものもかっこいい。

硬くて指が疲れそう(作る気?ないです:笑)

これも「いま」でも持てますね。

質感が何とも言えず…

そして油単もありました。油と柿渋で補強したもの。まだ油の匂いがしました。

長持ちカバーの大きさに驚き。どんな長持ちだったのか!

楮や梶は日本のいたるところで自生していたので、
木綿以前の時代には各地で太布が織られていました。
江戸時代に木綿が普及し始めると、太布を売って木綿を買ったとか。
現金収入が得られるようになると太布は急激に忘れられていきます。
今では「阿波太布製造技術保存伝承会」によって「生きた布」として
技術の伝承が行われています。
「保存会」に関して「とてつもなく古い布」で詳しく紹介されています。
このインタビューが掲載されている「産土プロジェクト」には他にも興味深い
インタビューや映像がたくさんあります。
2008年の「工房からの風」で太布(楮布)で出展された
石川文江さんから購入した楮の繊維を取り出して

ひとり感慨にふけっていたら「夏じたく展」に和紙の方のブースで
石川さんの帯が出展されていてご本人もいらしていたとのお知らせが!
ああ、お会いしていろいろお話うかがいしたかったわ~。
ほかにも調べ始めたらいろいろ出て来て、
盛り込み過ぎのブログになりかけましたが、
なんと最後の最後でデータが飛んでしまいました!
詰め込み過ぎは消化不良の元、ということでしょうか。
余分なことを削って復活!
それでも一度に読むには長すぎますね。