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Channel: 布とお茶を巡る旅
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Blue Alchemy:藍の物語

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先日、友だちから借りてこちらのDVDを見ました。
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このドキュメンタリー映画は、藍の文化、経済、歴史、復興、グローバルな視点からとらえた現代の藍の物語です。
イギリス、アメリカ、アフリカ、インド、バングラデシュ、日本、メキシコ、エルサルバドル、各国の藍の現場に足を運び、映像とインタビューで構成する貴重な記録映画です。欧米で放映され大きな反響を呼んでいます。
日本からは、ウイットワース美術館における新道弘之のインスタレーションや美山の工房における藍染の様子、滋賀県野洲の紺九、播磨藍のすくも作りなどが紹介されています。 

このDVDは2014年5月に吉野綾さんと京都・美山にある
新道弘之さんの「ちいさな藍美術館」へ行った時、
綾さんが購入したものです。

綾さんはこのDVDを探していたのだそうです。
ネット検索でこのDVDの存在を知っていたそうですが、
まさか美山で出会いうとは!と喜びもひとしおのようでした。

このDVD全編英語なのですが、
こちらで購入すると新道さんの解説ブックレット付という特典も。

とくに私にはこのブックレットが大いに役立ちました。
内容が藍だし、映像があるので見ればなんとなくわかるだろう
と思っていたのですが、ナレーションが多いんです:笑
しかも世界のいろいろなところに取材に行っているので
いろんな英語が話されていてなおさら聞き取れません。

インド、バングラディッシュ、メキシコ、アメリカ、
ナイジェリア、エル・サルバドル、そして日本。

藍の染料化の製造過程がきめ細かに取材されているのがインドです。
その様子は真木テキスタイルの「南インド染織紀行」(2006年12月)でも
紹介されていて読んだことがありますが、
それが動画で見られたのは興味深いことでした。
(ほんの一部ですが予告編が見られます)
8月に刈り取った藍をプールのような大きな水槽に一晩漬けます。
すると発酵が始まりその液を下の水槽に落とします。
そこへ5~6人の労働者が1チームとなって入り、
炎天下の水槽で腰まで浸かって全身で藍の液を撹拌します。
途中、大皿から水をがぶ飲みする様子からも過酷さがよく理解できます
なにしろ南インドの8月ですから。

発酵によって葉の成分インディカンはインドキシルへ変化し、
撹拌による酸化でインディゴという色素に変化します。

このようにして取り出した藍の色素を天日干しして固め、
ブロック状の藍錠にしたからこそ、
世界中に輸出が出来るようになったのです。
16世紀の初め、スパイスや木綿地とともに藍はヨーロッパへもたらされます。
このインド藍がヨーロッパで古くから生産されていたウォードを
駆逐してしまいます。

しかし藍のプランテーションで儲けたのは
東インド会社やヨーロッパ諸国なのです。
藍を買わなければならなくなったヨーロッパ諸国は
世界各地の植民地で藍のプランテーションを始めます。

もちろんアメリカでも藍は育てられていました。
1739年に南カロライナに入植したルーカス一家が、
苦労の末、1744年には満足のいく収穫を成功たという記録があります。
その後、イギリスは上質な藍を栽培することを奨励するために、
1ポンドにつき6ペンスの奨励金をだしていたそうです。

このイギリスの奨励金が南カロライナでの農場拡大に拍車をかけ、
それが奴隷貿易を助長させた要因のひとつとも言われています。
しかしこの南カロライナの農場は、南北戦争によって消えてしまいます。

と、まぁここまで「藍の暗黒史」に触れてきましたが、
もちろんこのDVDには世界各地で自然発生的に生まれた
藍染めもたくさん紹介されています。

とくにメキシコの伝統的な藍染めは不思議で、
もう少し掘り下げてほしかったと残念です。
登場するのはナワ族の母娘。
アステカ時代からの伝統的な藍染めを継承しています。
藍の発酵を手助けするという植物を数種類と、
代々継承されているインディゴの溶解液を加えて、
火にかけるのです!
映像では
「4度目の火入れで小さな泡が浮き始め、発酵が始まりました」
と説明があるのですが、仕組みは謎のまま…
とても気になりますね。

そして西アフリカ、ヨルバ族による藍のたい肥作り。
そうなんです、たい肥にしているのは日本だけではありません。
まぁ日本のスクモとはかなり違う感じでしたが。

日本編では播磨藍の若き藍師・村井弘昌さんが登場しています。
もとは写真家だった村井さんは、藍に魅せられて藍師になったという人物。
「対話をしながら水を打っています。
 つねにこの中に菌が生きているので、
 単に温度が上がって発酵しているだけではなくて、
 この中に命があってともに息をしているってことなんです」
このスクモで染めた藍色が50年、100年後にちゃんと残っているか、
重大な仕事ですね。

そして作家として新道弘之さんも登場。
作品とともにスクモからの藍建てを見せてくださっています。
新道さんは日本語で話している時と変わらない口調で
英語も話されるんだなぁと妙に感心。

ほかにアメリカのジーンズの歴史やエルサルバドル、
バングラディッシュでの現在の取り組みについても取材がされています。

DVDに登場したエルサルバドルの藍についてはこちらに最新情報があります。

いろいろと考えさせられるDVDでした。
お求めになりたい方は➡ちいさな藍美術館・DVD販売へ。





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