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Channel: 布とお茶を巡る旅
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漆がつなぐアジアの山々

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*「貝の道」は写真の整理に浸かれたので、ちょっとお休みして
 こちらの話題を先に更新します。


三軒茶屋の生活工房で始まった「漆がつなぐアジアの山々」展へ
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これはクライム・エブリ・マウンテンというプロジェクトの第2弾です。
第一弾は昨年11月のミャオ族の刺繍と暮らし 展でした。

次はいつかなぁと楽しみにしていたので、さっそく見学へ。
前回が3階と4階のフロアを使った大々的なものだったので、
今回も期待して行きましたが、規模は小さく3階のみでした。

でも見応え十分、疲れなくてよかったかも。
漆ってアジアの一部の地域にしか生育していないってご存知でした?ウルシ科の樹木は世界中に800種近くありますが、その中でいわゆる〈漆〉として樹液が使用できるのはほんの数種しかありません。
その数種すべてが、日本から韓国・中国・ベトナム・タイ・ミャンマー・ラオス・ブータンにかけて続く照葉樹林帯の山間部に生育しています。
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ウルシの木に傷を付けると粘りのある樹液を流し、やがて黒く固まって傷を修復しようとします。
まるで人間でいう血液のような自然治癒のちからを、この地域の人々は天然の防水剤、接着剤として活用してきました。
食器や家具、住居、装身具など日常のものから、儀礼の道具や宗教建築にも使われます。
漆と人の歴史は、実に1万年以上前にさかのぼるといわれています。

ウルシノキ:ウルシ科ウルシ属
日本、中国西南部と朝鮮半島に生育。
日本では九州から北海道まで広範囲に生育している。
樹高7~8mほどの落葉中高木樹で、葉は奇数で羽状複葉型。
6月中旬に白黄色の小さな花を房状につける。
雄木と雌木がある。樹液の成分はウルシオール(urushiol)。

こちらは漆掻きした後のウルシノキ、1シーズン分の掻き傷です。
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ビルマウルシ:ウルシ科グルタ属
タイ北部からミャンマー、ラオス、インド東北部に生育。
樹液が黒色であることからブラックツリーとも呼ばれる。
タイ北部の山岳地域に多く生育しており、
樹高は20m、直径が70~80cmの高木で葉も30cmほどある。
12月~2月の乾季に梢の先にやや黄色い花をつける。
樹液の成分はチチオール(thitsiol)

ミャンマーの漆掻きのおじさん(クリックで拡大します)
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アンナンウルシ:ハゼノキの一種
ベトナムのハノイから北方の山岳地帯を中心にカンボジア、
台湾にも植生している。樹高7mほどの常緑樹で葉は細かく、
樹液は白色で量も多く採取できる。
樹液の成分はラッコール(Laccol)

ヴェトナムの漆器。
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ブータンのウルシ
ブータン東部のタシガ近辺に多く自生するハゼの変種である
セ(現地語)から採取されるが、成分など詳しくは分かっていない。

ブータンのツァンパの入れ物(右)
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ウルシの原産地と漆製品の発祥
世界最古の漆製品は近年まで、中国の長江河口にある河姆渡遺跡で
発掘された約7,500年前の木弓とされていました。
そのため、ウルシの木は中国が原産地で、漆器の技術も漆木と共に
大陸から日本へ伝わったと考えられてきました。
ところが2000年に、北海道函館の垣の島遺跡から出土した
漆の装飾品6点が、放射性炭素年代測定により9,000年前の
縄文時代早期のものであると確認されました。
さらに2011年、福井県の鳥浜貝塚で出土した漆の枝は、
12,600年前のもので世界最古であることが確認されました。

こういった出土品から、現在ではウルシの木は
大陸から渡来したのではなく、中国からアジアの照葉樹林と同じく、
日本にもともと自生していたのではないかとする説もでてきています。

展示品の写真はまた明日!

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