鳥丸先生のカード織り研究

旅とテキスタイルさん企画の
鳥丸知子さんによるカード織り研究のお話を聞いてきました。
（画像は旅とテキスタイルさんFBより拝借）

前回ミャオ族のお話をうかがった時に、今はカード織りの研究に軸足を
置いていると伺ったので、このお話をとても楽しみにしていました。

タイトルの「人はいかにして織りを手に入れたか」は、
鳥丸母子にとっての研究の大きなテーマ。

今回は2回に分けて
＊6日：糸作りから織りへ　
　　　　～各地フィールドワークから考察するカード織り技術の発生と発展
＊7日：カード織りについて　
　　　　～ミャンマーのカード織り技術と文化を中心に

という内容ですが、残念ながら私は6日だけの参加です。

そもそも「カード織り」ってなに？という方へ
動物の皮や紙、薄板などで作ったカードに穴をあけ、その穴に経糸を通し、カードを回転させることにより経糸を上下に「開口」させ、緯糸を通して製織する織り技法である。
言葉では理解しにくいという方へフェリシモのキットの画像で。

ネット検索すると動画もたくさんありますので、
気になる方は検索してください。

今回はその技法を学ぶワークショップではなく、
鳥丸さんの研究を画像や動画でレクチャーしていただきました。

鳥丸さんがカード織りの研究を始めたのは中国の東華大学に留学して
修士論文のテーマとしたことに始まるというのをお聞きして驚きました。
今から20年ほど前のことです。
ミャオの調査・研究と同時に研究されていたのですね。

なぜカード織りをテーマに選んだのですかとお聞きすると
「だれも研究していなかったから」と即答されました。

だれも研究していないということは資料もほとんどないところから
文字通り「手探りで」始められた研究です。
私にはその進め方が、まるで上質なミステリーを読んでいるようで
とてもわくわくしました。


当時の中国でカード織りのことを知っている人はほとんどいません。
ですから例えばチベットの文物展があると聞くと見に行って、
出展品に紐のようなものがあるとそれがカード織りかチェックして、
カード織りと分かると現地へフィールドワークに出かけます。

現地に行って聞き込みをしてカード織りをしている人を見つけ出し、
実際にやってもらって画像や動画におさめ、聞き取り調査をする。

そのようにしてほとんど手がかりの無い中から
貴重な成果を積み重ね、3年かけて修士論文を仕上げたのです。

今回聞いた中で一番驚いたのが、
中国・貴州省の屯堡族（トンプ族）と呼ばれる特殊な漢民族の衣装の帯です。

屯堡族は「老漢人」とも呼ばれ、明代に少数民族制圧のために、
派遣された漢民族の兵士の子孫がそのまま現地に留まって
暮らしている人々です。ですから現代の漢族とは違う昔の文化や
風習をそのまま維持し、独自の民族衣装を着ています。
その衣装の帯がとても手の込んだ作りで、
動画を見せていただいてやっと理解でしたのですが、
あるところまでは袋織りをして途中からカード織りになるのです。
しかもその間に長い房にする糸を入れ込んで、
その部分はあとでマクラメで処理するという手の込んだ帯です。
と書いても理解できないでしょうね：苦笑

カード織りの部分では文字を模様として織り込んでいます。
それなのに最後に真っ黒に染めてしまうので、
せっかく入れた模様はほとんど見えなくなってしまう、というもの。

ほかにもたくさん写真や実物をみせていただきましたが、
これ以上言葉で説明するのは私には難しくてお手上げです。
（今回展示品の写真撮影はできませんでしたので）

カード織りしてみたいわ～という方にお勧めなのはスピナッツさんの
こちらの本。

カードも販売されていますよ。

最後に鳥丸さんの資料から
かつては多くの国で製織されていたカード織物も、現在では生活様式の変化や大量生産の技術開発が進み、カード織り紐の需要が減り、ごく限られた地域でのみ、その技術が継承されている。とあります。
趣味や研究のためにカード織りをしている方はいますが、
生活必需品としては消えつつあるカード織りです。
鳥丸さんも現在辛うじて残っている地域への現地調査が急務で、
まだまだ考察が追いつかないとおっしゃっていました。

資料をいただきましたので、
引き続きミャンマーのカード織りのことも書いてみたいと思います。