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Channel: 布とお茶を巡る旅
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ミャンマーの捲装紐:サトジョ

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去年の6月にティモールテキスタイルの岡崎さんから入手したこちらの紐。
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経典をまとめるための紐とお聞きしましたが、
それ以上のことは知りませんでした。
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ミャンマーの言葉が織り込まれていて、
それは経典を寄進した人の名前や由来などとも説明していただきました。
私はその文字の美しさと紐好きという理由で求めましたが、
今回、鳥丸さんから頂いた資料で、この捲装紐:サトジョについて
深く知ることができました。

ミャンマーでは「貝葉経:ばいようきょう」を絹などの上等な袱紗で包み
その上から木綿製の捲装紐:サトジョで巻いて、
寺院に寄進するといいます。

大部分のサトジョは縞や簡単な文様を織り出したものですが、
一部に仏教に関わる絵文様や装飾文字を織り出したものがあり、
世界中の好事家の蒐集の対象になっているといいます。

その特別なサトジョは「技術的にも美的にもミャンマー染織の至宝」と
まで言われているとか!

鳥丸さんが資料のなかで解説されているサトジョは、
紅と白の木綿糸で、経糸総本数160本、織り幅2㎝、長さ464㎝、
たて二重織組織で絵や文字が織り出されているものです。

私のサトジョは残念ながら完品ではなく
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織り幅2.8㎝、長さは192㎝ほどで切られています。
しかも文字だけで絵模様はありません。

現在は経典も紙の印刷物になっていますので、
残念ながらこのサトジョも作られることがなくなりました。

古い貝葉経はヤンゴン国立博物館や有名僧院、
マンダレー文化博物館などに収蔵されているため、
詳細な観察や写真の撮影が禁止されているものが多くなっています。

海外のコレクターや博物館にあるものから研究が進められていますが、
ロンドンのブライトン博物館所蔵の50本のサトジョの中に
1892年~1928年の年号を織り込んだものがあります。
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このサトジョに装飾文字が織り出されるようになった限られた期間が
イギリス植民地時代と重なるので、
19世紀後半に起こったアーツアンドクラフツ運動の中で
世界中に広まったカリグラフィーが、
植民地下のミャンマーのカード織りにも影響が及んだ可能性があると
鳥丸さんは考えているようです。

そしてこの装飾文字の最後のサトジョは1970年初期に織られて、
その後ミャンマーでは製織されていないと、
ミャンマー美術研究家の報告があります。
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すでに消滅してしまったとされていたこのサトジョの技術が、
じつはマンダレー近郊のサンダース織物研究所で
保全されていることが分かったそうです。

このサンダース織物研究所で指導員をしていた女性が、
1991年にとある僧院で10cm足らずのサトジョの裂紐を初めて見て、
その美しさに魅了され、試行錯誤ののちに解明し、
1992年に研究所の同僚数名に教え、
それが現在まで継続しているそうです。
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鳥丸さんの資料は経済的な価値観が急速に変化する今日の状況に鑑みて、技術伝承とその技術保存に対する学術的な対策が望まれる。まずはミャンマー全土の寺院に散在するサトジョの詳細な調査が待たれるのである。という言葉で締めくくられています。

ますますこの紐:サトジョが愛おしくなりました。


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