Quantcast
Channel: 布とお茶を巡る旅
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1054

万載プロジェクト

$
0
0
12月に小田原で青土・薫さんにお会いしたとき、
ご挨拶もそこそこに、「はいこれ」と手渡されたのは
苧麻とおぼしき美しい糸が入った小箱です。
_c0033636_22214707.jpg


「手績苧麻糸(180羽) 中国・江西万載」と
手書きで書かれた文字を見て、
_c0033636_22221426.jpg

写真を撮ろうと思ったら「それお土産よ」と驚きの言葉が。
_c0033636_22224746.jpg


ここに書かれた「180羽」とは1インチ四方の間に入る経糸と緯糸の
合計の数が、180本という意味です。
1インチは2.54㎝ですから、1㎝に経緯各35本と言う細さです。
もちろんそれは人の手で績まれた(繊維を裂いて繋いだ)糸です。

この糸は青土さんが2018年から中国の若者たちと取り組んできた
高品質の麻布を作る「万載プロジェクト」の成果です。

そして見せていただいたのがこちらの布(着尺)です。
規格 巾0.4m x 長さ13.5m 重さ466g
_c0033636_10030923.jpg

ただし、180羽の糸で布を織ると和服には薄すぎて耐えられません。
そこで150羽の糸で織ってもらったものがこちらの布です。

万載は中国江西省宜春市にあり、昔から80羽くらいの
「生平(きびら)麻」の産地です

中国側のプロジェクトチームのリーダーの青年がこの万載の出身で、
長らく途絶えていた「鶏骨白」という苧麻の品種を復活することから、
プロジェクトはスタートしました。

「鶏骨白」は、鶏の骨のように繊維が白く、
柔らかいという特徴を持っていますが、
栽培が難しいため、長いこと作られなくなっていました。

しかし、青土さんの試みを実現させるには、この苧麻の復活が必要と、
中国の青年たちの熱意でとうとう「鶏骨白」が復活しました。

苧績みも糸の繋ぎ目に段差が出来ないように工夫しました。
績み手も織り手もまだいる中国の強みと、
青土さんの熱意を受けた人々の努力で(コロナ禍を挟んで)
5年の歳月をかけて、昨年年ようやく一枚の布が完成しました。

こちらの布は中国伝統の麻布(生平)に則り、
経糸・緯糸共に撚りをかけない糸を使いました。

こうして中国と日本のたくさんの「手」を繋いで出来た、
とりわけ美しい布が誕生したのです。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 1054

Trending Articles